外国語上達における発音の聞き取りの重要性と修音の開発経緯について
修音の開発者である私は、今までいろいろな方法で英語を学習してきました。
1.始めに試したのは「とにかく聞く」という方法
2.次に試したのは文法
3.もう一度、聞き流しに挑戦
4.外国語に囲まれた生活
5.外国語会話スクール
6.日本人と英語ネイティブ以外の人の英語能力
7.学習ソフトウェア
8.発音の重要性の整理
9.発音の聞き取りの重要性の確信
10.継続して学習するために
11.修音の開発について
12.修音のこれから
13.修音英語について(追記:2010年9月4日)
【1】始めに試したのは「とにかく聞く」という方法
最初の教材はNHKのテキストとカセットでした。当時は大学生だったので、通学の時などカセットを聞いていました。
ただし、テキストはほとんど読まず、ただ聞き流していました。
その後、旅行でアメリカとカナダに行ったのですが、英語はほとんど通じませんでした。
ただ、カナダでタクシーに乗っているいる時、景色がとてもきれいだったので
思わず、カセットで聞いていた "Looks like a park !" という言葉が口に出してしまいました。
この言葉だけは、タクシーの運転手にも良く聞き取れたようで、少し驚いた顔をしていました。
(カセットに出てくる少女が言った "Looks like a park !" のイントネーションが印象的で今でもはっきり覚えています。)
カセットを聞き流すという方法は、一定の効果はあったものの「話せる」レベルには至りませんでした。
今でも、長い時間外国語を聞くことは、非常に重要だと考えていますが、
忍耐とたくさんの時間が必要だと思います。
【2】次に試したのは文法
大学を卒業し、ソフトウェア会社に入社しました。会社で研修があり、その中には英語も含まれていました。
もう一度、英語を勉強しようと思い本屋である本を見つけました。
タイトルはたしか「話すための英文法」だったと思います。
(古い話なので、本のタイトルは確かではありませんし、本の内容も覚えていません。)
英語は一応、中学生から習っているので、会話でよく使われる文法パターンを覚えれば
英語を話せるようになるのでないかと考えました。
あまり真面目に勉強しなかったのが原因かもしれませんが、効果はあまりなかったように思います。
外国語を話せるようになるためには、文法はもちろん必要だと思います。
しかし、文法についてはある程度の知識があれば、あとは慣れの方が大きいと、今では思っています。
後に、初めて仕事でアメリカに出張した時、知っている単語と文法を組み合わせて、
一生懸命話してみましたが、ほとんど通じませんでした。
通じるコツは、ネイティブの方から聞いたことのある言葉と発音をそのまま話すか、
単語だけをすり替えて話すことです。
単語をすり替える際にも、和英辞書で引いた単語では意味が通じない場合があります。
単語もネイティブの方の使い方を真似るのが安全です。
(辞書で引く場合は、必ず例文に目を通し、自分が表現したい意味で使われているか確認することをお勧めします。)
【3】もう一度、聞き流しに挑戦
ある日、雑誌で英会話教材の広告を見ました。その教材は基本的には英語のカセットを聞き流すのですが、
カセットには英語と日本語が交互に録音されています。
意味をイメージしながら、外国語を聞けば、外国語が身につくと思い購入しました。
また、繰り返し聞けば、発音も修得できると考えました。
しかし、これも思ったような効果はありませんでした。一番の原因は長続きしなかったことだと思います。
この方法だけで外国語を修得するには、かなりの時間が必要ではないかと思います。
また、この頃から、語学学習にはパソコンが向いているのでないかと思い始めました。
外国語を聞いていると、うまく聞き取れない発音部分があります。
その発音だけを繰り返し聞くのはカセットやCDではとても面倒です。
パソコンであれば、なっとくするまで何度もその発音を確認できると考えるようになりました。
【4】外国語に囲まれた生活
仕事で、あるソフトの日本語化をするため、アメリカに半年間滞在したことがあります。
ソフト開発が仕事なので、あまり人と話す必要はありませんでしたが、日本人は私1人でした。
最初は、相手が何を言っているのか、ぜんぜんわかりませんでした。
私の言ったことも、なかなか理解してもらえませんでした。
ただ、そのうち慣れるだろうと思い、ホテルではずっと英語のテレビ番組を見ていました。
気が付くと1ヶ月が過ぎていましたが、私の英語のレベルはほとんど変わっていませんでした。
ある時、どうしてもアメリカ人スタッフと会議をする必要がでてきました。
私は、必死で勉強しました。打ち合わせで話す内容を、鏡の前で何度も、何度も、繰り返し練習しました。
会議は無事に終わり、スタッフの1人が声をかけてくれました。
「英語うまくなったね」
私はこの時、外国語は自然に身につくものではなく、努力が必要なことに気付きました。(あたりまえですが・・・)
子供なら自然に言葉は身につくと考えがちですが、私は子供も努力していると思っています。
私の子供がまだ言葉を話せるようになる前、子供は私の言葉を一生懸命聞いたり
なに語だかわからない言葉を一生懸命私に話したり、寝る時もなんだか分からない独り言を一生懸命話していました。
言葉の修得には時間と努力が必要です。
【5】外国語会話スクール
半年間のアメリカでの生活の中で、スケジュールの関係で2週間空きができることになりました。
私はその間、英会話学校で個人レッスンを受けました。
アメリカですので、先生は一切日本語を話せません。
この頃には私も多少は英語が話せるようになっていたので、英語で英語を教えてもらいました。
個人レッスンだったので、教えてもらうというよりは、英語の学習方法についてディスカッションしている感じでした。
日本では文法を S+V+O+C などと習うことを説明すると、先生はよく分からないみたいで「きょとん」としていたのが
印象的です。
また、単語の重要性も再認識しましたが、単語を覚えることがたいへんなことも再認識しました。
レッスンは楽しかったのですが、期間が2週間と短かかったためか、期待したほどの効果はありませんでした。
この頃から、
日本人には日本人に合った外国語の学習方法があるのではないかと考え始めるようになりました。
【6】日本人と英語ネイティブ以外の人の英語能力
仕事の関係でインドネシアに20ヶ月程滞在したことがあります。
その仕事場では、日本人、インドネシア人、イギリス人、アメリカ人、韓国人、インド人、フィリピン人、フランス人など
いろいろな国の人々が働いていました。
インド人、フィリピン人はもともと英語が話せる人が多いのですが、一般のインドネシア人は英語を話せない人が
ほとんどです。
それでも、仕事場にいるインドネシア人はイギリス人やアメリカ人と、とても流暢に会話していました。
その中で、平均的に英語が下手だったのは、日本人と韓国人だったと思います。(あくまで私の主観です。)
【7】学習ソフトウェア
インドネシアの滞在のあと、英語学習ソフトを購入しました。
コンテンツが面白くないと続かないと思い、有名なアメリカの青春ドラマをコンテンツに取り入れたソフトウェアを
選択しました。
ソフトウェアなので、聞きたい部分を何度も繰り返して聞くことができます。
英文や日本語も表示されているので、「話しているはず」の内容は分かるのですが
何回繰り替えして聞いても、そのように聞こえない部分があります。
この時、初めて気付きました。
私には英語が正しく聞こえていないかも知れない。
外国語学習で最初にやることは、発音を正しく聞き取れるようになること。
この教材は面白い教材でしたが、ドラマの内容に飽きてしまい、使わなくなってしまいました。
【8】発音の重要性の整理
以上の経験をもとに、発音の重要性について次のように考えるようになりました。
・発音が正しく聞き取れなければ、相手の言葉も正しく聞き取れない。
・発音が正しく聞き取れなければ、正しく発音することは難しい。
(正しく発音できているかどうか自分で判断できない。)
・発音が正しく聞き取れなければ、会話時に類推する部分が多くなり、意味が分からない可能性が高くなる。
・発音が正しく聞き取れれば、会話時に類推する部分が少なくなり、意味が分かる可能性が高くなる。
(正しい類推を繰り返せば、分からなかった部分が、だんだん分かるようになる。)
・単語は発音とともに記憶するが、発音があいまいだと記憶するのが難しい。
最初に発音を学習をしていれば、上記で紹介した教材も、もっと有効に活用できたと思います。
私は最初に発音の学習をしなかったこを後悔しています。
【9】発音の聞き取りの重要性の確信
ATR CALL「完全版 英語リスニング科学的上達法 音韻篇」(ATR人間情報通信研究所編:1999年3月1日発売)というソフトウェア付きの本に出会いました。
(情報広場の★外国語学習方法にATR CALLの説明があります。)
この本は研究成果をベースとしていて、信頼のできるものでした。
私は確信しました。
先ずは発音を正しく聞き取れるようになること。
この本は特に、日本人にとって聞き分けが難しい音(例えば、L と R)を中心にトレーニングする内容でした。
ただし、聞き分けできるようになるためには、かなりのトレーニングが必要です。
このトレーニングを始めて、ある経験をしました。
駅のホームで誰かが話していたのですが、なにげなくそちらを見ると、外国の方で少しビックリしました。
外国の方はめずらしくないのですが、英語を話しているにもかかわらず、ハッキリ聞き取れるのです。
うまく説明できませんが、日本語を聞いているような感じなのです。
英語なので意味の分からない部分もあるのですが、意味がわからくても言葉はハッキリわかるのです。
(たぶん、その方の話す発音が私に合っていたのでしょう。)
その人の英語を聞き続ければ、きっと英語が上達するだろうと思いました。
この教材はとても良い教材でしたが、トレーニングがやや単調で、しかも、効果が出るまで時間がかかるので、継続してトレーニングするには努力が必要です。残念ながら私は完走することが出来ませんでした。
(実は「英語リスニング科学的上達法」とシリーズの「英語スピーキング科学的上達法」という本も購入したことがあります。
この本にもソフトウェアが付属しており、ネイティブの発音が動画で見れたり、音声認識エンジンにより、自分の発音を判定できたりします。
ただ、何故だかほとんど使った覚えがありません。あまり興味が持てなかった理由も思い出せません。すみません。)
ただし、私には正しい発音が聞こえていなかったことは、はっきり認識でしました。
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【10】継続して学習するために
ゲーム感覚という学習教材を時々見かけます。私自身はこの手の教材を使ったことはありませんが
もし、単にアニメーションが多かったり、キャラクターが話しかけてくるようなものであれば
結局、飽きてしまうような気がします。
語学学習はどうしても繰り返しが必要なので、コンテンツが面白くても
何回も繰り返すうちに飽きてしまう可能性があります。
(以前、私は子供におもちゃの英語教材を買ってあげたことがありますが
子供はすぐに飽きてしまいました。私の子供は私に似ているのでしょう。)
私はゲームは嫌いですが、テトリスには少しハマりました。
みなさんに中にも、テトリスをしたことがある方は多いのでないでしょうか?
(若い人は知らないかも知れませんが・・・)
単純なゲームなのですが、なぜかハマってしまいます。
脳科学者の茂木健一郎さんの「脳を活かす勉強法」という著書のなかに次のような文があります。
『一生懸命考えていた問題がやっと解けた。その時のうれしさを思い出してみてください。
「やった!できた!」この時、あなたの脳の中では「ドーパミン」と呼ばれる物質が分泌されています。ドーパミンは神経伝達物質のひとつで、「快感」を生み出す脳内物質として知られています。
この分泌量が多ければ多いほど、人間は大きな快感・喜びを感じることが分かっています。・・・
・・・ドーパミンが放出されるのは、「やさしすぎず、難しすぎない」課題や問題に取り組んでいる瞬間です。』
とあります。さらに、同書には『タイムプレッシャー』や『速さ』についても触れられています。
テトリスはこれらをうまく利用していたのだと思われます。
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【11】修音の開発について
私は、上記のような経験や知識をもとに修音を開発しようと考えました。
修音は中国語発音の上達ソフトです。英語ではなく中国語を選んだ主な理由は次のとおりです。
・私が正しく聞き取れない言語の方が良い。
(修音を開発するためには、異なった発音であるが日本人には同じに聞こえる発音を集める必要があった。)
・妻が中国人なので、ネイティブの立場から、アドバイスやチェックを受けることができる。
・中国語の発音はマトリックス(ピンイン表)で表現でき、それぞれの音はピンインで表現できる。
(中国ではピンインは幼稚園から習います。また、中国語会話教室でもピンインからスタートするところが多いようです。)
・中国語は発音が難しいと言われている言語である。
・発音に弱い日本人のハンデを漢字でカバーできる。
・教材に必要な音声等の仕入れが安い。(中国は人件費が安い。)
・妻が中国人なので、中国語に愛着がある。
修音は私がいちばん欲しかった教材です。
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録音スタジオ(音声はアナウンサーに依頼) |
【12】修音のこれから
修音は、まだまだ改良する部分があると考えています。
もっと上達しやすい発音トレーニングソフトに、
修音を育てていきたいと思っています。
みなさまからもご意見を頂けると、非常に助かります。
よろしくお願い致します。
2009年3月22日
【13】修音英語について(追記:2010年9月4日)
『修音』の初めてのリリースから約1年半がたちました。その間、バージョンアップを3回おこない、少しづつ改良を加えてきました。また、多くのお客様にご利用頂き、良い評価も頂けるようになりました。
2010年9月3日、これらの経験も踏まえ英語発音上達ソフトの『修音英語』をリリースしました。
もともと英会話で苦労した経験がありますので、英語の発音上達ソフトも開発したかったのですが、英語には中国語のピンイン表のような発音表がないため、なかなか着手できずにいました。
ある時、フォニックスを発音パターンとして利用することを思いつきました。妻が英語の教師だったこともあり、開発がいっきに進みました。
『修音英語』は
『修音』と同様に、必ず語学上達に貢献できると確信しています。
『修音英語』は『修音』とともに、もっと役立つソフトに育てていく予定です。
みなさまからもご意見を頂けると、非常に助かります。
これからも、どうぞよろしくお願い致します。